東京高等裁判所 平成2年(行コ)51号 判決 1990年8月08日
横浜市緑区青葉台一丁目一八番一三号
控訴人
佐々木信義
右訴訟代理人弁護士
山下英樹
横浜市緑区長津田四丁目一番一二号
被控訴人
緑税務署長
榑林良直
右指定代理人
小野雅也
浦川譲
青木与志次郎
佐藤謙一
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が昭和六二年一〇月三一日になした次の各処分を取り消す。
控訴人の昭和六〇年分所得税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分
控訴人の昭和六一年分所得税の更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(但し、昭和六三年一〇月一三日の過少申告加算税変更決定により減額されたもの)
3 訴訟費用は、第一、二審を通じ被控訴人の負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁
主文第一項と同旨
第二当事者の主張
控訴人の当審における新たな主張を次のとおり付加するほか、原判決事実摘示第二記載(ただし、原判決三枚目表二行目の「日東精鋳造株式会社」を「日東精鋳株式会社」と訂正する。)のとおりであるから、これを引用する。
「所得税法は、所得を一〇種類に区分し、このうち利子所得を除くその余の所得については、その所得金額を算定するにあたり、名称や概算(給与所得、退職所得)又は実額(その余の所得)の相違はあっても、いずれも通常「必要経費」とされる部分の控除を認めており、利子所得にも右経費として観念する部分が存在するにもかかわらず、その控除を認めない同法二三条二項の規定は、憲法一四条一項、二九条に違反し無効である。」
第三証拠関係
原判決事実摘示第三記載のとおりである。
理由
一 当裁判所は、控訴人の本訴請求をいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、控訴人の当審における新主張につき次のとおり判断するほか、原判決の理由と同一であるから、これを引用する。
「所得税法は、一部の所得につき必要経費の控除を明文上認めているにもかかわらず、同法二三条二項の規定は、利子所得につき必要経費の控除を認めていないが、これは所得の種類や態様の異なるのに応じた徴税の方法を定めるという国の租税立法政策に由来するものであって合理的であるというべきであるから、これをもって憲法一四条一項、二九条に違反するということはできない。」
二 以上のとおり、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 武藤春光 裁判官 伊藤博 裁判官 吉原耕平)